日本空手松涛連盟では、発足以来、とりわけ次にあげる二つの柱を大切にしてきました。
ひとつは、先人達が伝統的に築き上げてきた「基本や型」を守り、「伝統武道としての空手道」を後世に伝えて行くこと。そして、もうひとつは、「伝統武道」の考え方を尊重しながらも、常に「技術の革新」を追求し、空手道競技の国際化やオリンピック競技化に伴う様々な変化にも対応しうる、実践的な「組手技術」に活かしていくということです。
この、「伝統武道の尊重」と「技術革新の追求」を両立させているのが、松涛連盟が世界に誇る「研修生制度」を核にした優秀な選手の育成システムです。
このシステムを実現したのは、帝京大学空手道部の師範として帝京大学を前人未到の4種目完全制覇に導き、さらには全日本空手道連盟ナショナルチーム強化委員長として世界を舞台に日本代表選手を率いてきた香川首席師範の指導技術です。
競技の国際化がもたらす様々な変化を試合の現場で体験してきた香川師範は、武道の殻にこもることなく、早くから海外の選手とも戦える空手道を模索してきました。これまでに全日本や世界を制する大勢のチャンピオンを輩出し、いまなお全日本空手道連盟ナショナルチームに幾多の強化選手を送りだしています。
松涛連盟では、この研修生制度を経たすべての指導員が、競技でのレベルアップのみならず、世界中のいかなる国でも、強く美しい空手道の基本技術と精神を伝えられるように、武道教育を充実させてきたのです。
トップ選手の活躍は、つねに競技技術の革新と活性化をもたらしてくれます。
それは、新しい技術を模索することだけではありません。優れた古典に学ぶことで世界の最先端の空手技術に対応出来るだけの「身体バランス」と「応用技術」を身につけることもできるのです。
浅井哲彦初代首席師範は、従来の松涛館流ではあまり活用されなかった猫足立ちや、競技化のなかで忘れられた回転運動、打ち技などを稽古にふんだんにとり込むことで、体力や性別、そして年齢を超えて、自分の持つ力を最大限に引き出し、一撃必殺で相手を倒すことが出来る突きや蹴りを習得することを常に研究し「進化・深化」させてきました。
その中で生まれたのが松涛連盟オリジナルの基本型「順路初段〜五段」と古典型です。順路型は、未知なる体バランスを要求します。それらの型の動きは、基本稽古にも取り入れられ、組手稽古での身体の使い方にも活かされています。
松涛連盟の特徴として特筆すべき点としてあげられるのは裾野のひろさです。
松涛館流会派(団体)のなかでも比較的「若い」松涛連盟を、かくも大勢の会員が選択してくださるのは、技術の革新性と社会性だと考えます。
「古典武道からの学び」と「世界動向に対応した技術革新」、この新旧両極からの、技術の進化は全会員の共有財産で、講習会などを通じて松涛連盟の各支部、そして会員たちに伝達されていきます。
松涛連盟に所属する、日本各地、そして世界各国の支部長や指導者たちは、先人達が伝統的に築き上げてきた「基本や型」を受け継いでいくとともに、さらには、「競技の国際化」に対応した「最先端の試合技術」を常に受け取り、それぞれの支部で、道場生たちに伝達していくことが出来るのです。
また、欧州で発展した障害者スポーツに触発された車椅子空手道の創設も、そうした革新的気風あっての試みでした。本来、人間を生かすために起こった空手道であるからこそ、障害の有無にかからず、だれにでも開放されるべきであるとの思いが、研究の出発点になっています。変化の激しい現実社会とどのように関わっていけるのか。松涛連盟の空手道は、とどまることなく動き続けています。